TISインテックグループでは、ファンドを活用しての投資ではなく、自己資金によるプリンシパル投資としてCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を展開している。TIS-CVCでは、同グループが携わる業界やIT領域で、スタートアップ企業と協業して成長を目指していく。その投資先の1社となるのが、トリプルキャリア(NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI)対応を強みに、MVNE(Mobile Virtual Network Enabler)事業とIoTプラットフォーム事業を展開するミークだ。両者の協業はどのようなきっかけでスタートして、どんな強みを発揮し、また両社のコラボレーションにより目指す世界とはどのようなものなのか、TISにおいてCVCを指揮する山岸 功昇氏と、ミークの創設者であり代表取締役 執行役員社長の峯村 竜太氏に話を聞いた。
いわゆる“格安スマホ”や“格安SIM”と呼ばれるスマートフォン向けの廉価な通信サービスを提供するMVNOの“裏側”を担うのがMVNE事業です。ユーザーへの通信回線をはじめ課金業務なども当社が提供するので、MVNO側はブランドと営業体制さえ用意すればすぐにでも格安SIMビジネスを展開することができます。この事業は私が当社を設立する以前のソニーネットワークコミュニケーションズ在籍時である2013年4月に開始しており、既に多くのMVNOへの支援実績があります。そして当社のMVNE事業の大きな特徴の1つとなるのが、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIというトリプルキャリア回線の音声・SMS機能付きデータ通信SIM、データ通信専用SIMの利用が可能である点です。
そしてその後、多くの企業・組織の間でDX推進が加速するなか、IoT(Internet of Things)のニーズ急拡大を受けて提供を開始したのが“「MEEQ」です。「MEEQ」は、トリプルキャリアのデータ通信専用SIMの利用が可能で、利用者側でシステムを用意しなくとも、直感的なGUIのWebコンソール画面から簡単に多数のIoT回線を購入・管理することができます。注文や解約、プランの変更も「MEEQコンソール」上で簡単に完結でき、SIMも1枚から購入することができるため、気軽に通信回線を利用できることから、新規事業やPoCの現場でも重宝されています。
加えて、データ蓄積のための「MEEQデータプラットフォーム」やデータ活用のための「MEEQ AI」も用意しており、IoT・DXで必要とされている機能をワンストップで提供しています。
また、IoT利用ではビルの影や山間地、沿岸部など一部のキャリアの電波の届かないような地域での利用ケースも多いですから、この点からもトリプルキャリアをカバーしていてユースケースに応じて自由に回線を選べる「MEEQ」は大きな強みとなります。
さらに、「MEEQ」は、トリプルキャリアの回線を混合させて閉域ネットワーク、つまりセキュアな通信環境を構築できることも大きな強みとなっております。Wi-Fi等のインターネット環境と比べて、セキュアな通信環境を実現するため、機密性の高いデータの取り扱いに最適となっております。
まさしくその点もMVNE事業との両面展開に秘密があります。実はスマートフォンユーザーの利用形態では動画閲覧をはじめとしたダウンロード側のトラフィックがほとんどを占めていて、アップロード側のトラフィックはほとんど利用されていないのです。一方で、IoTのユースケースでは監視カメラなど各デバイスの収集データのアップロードが圧倒的に多いです。つまり、MVNE事業での空き帯域を「MEEQ」で有効活用しているため、お客様ニーズに合わせて、最適なプランや料金体系を用意することができます。
こうしたプラン設計と、先ほどお話したトリプルキャリア対応やIoT・DXで必要とされている機能をワンストップでかつソフトウェア開発不要で容易に操作もできる点に加えて、クラウドでもオンプレでも閉域ネットワークの構築が可能であること、また約182カ国・地域に対応できるグローバルSIM対応で海外でのIoTビジネス展開が可能であることなど、「MEEQ」ならではの数々の特徴により、多種多様なニーズへの対応を可能としています。このため顧客の業種業態も広くまた日々順調に増え続けており、サービス開始から3年半で約8,000社に利用いただいております。
また、最近のトピックスとしてはIoTサービスの運営に必要なビジネスサポート機能を提供するサービスカテゴリー「MEEQビジネスツールズ」を新設しまして、第一弾のサービスとして「MEEQビジネスツールズ SMS送信」の提供を2024年7月2日より開始しました。
通信系のスタートアップ企業を経て2011年にソネットエンタテインメント(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)に入社し、NURO事業やMVNE事業の立ち上げに従事しました。そして2019年にMVNE事業で培ったモバイルネットワークやケイパビリティを活かしてIoTプラットフォーム事業に挑戦するために設立したのがミーク(設立当時当時ソニーネットワークコミュニケーションズ スマートプラットフォーム)です。
昨年度からお互いに協業の接点を模索する中で“ココだ!”と感じたポイントは、安価で質の高いトリプルキャリアカバーでセキュアな通信回線サービスでした。その既に確立された技術と実績、会社の方向性や事業構築力、当社との相性の良さそうな企業カルチャーが投資の主な決め手となり、投資をすることで両社の協業チャンスを拡げ、両社にメリットの有る形を目指すことになりました。まだ投資をしたばかりですので、当社のグループ会社数社を含めて協業に向けた話を進めているところです。これからお互いの強みを生かし、協業チャンスの拡大により、両社に実のある形を目指していきます。
2021年に「MEEQ」の事業を展開してから、IoT市場は急拡大を続けています。当社は通信関連で強みを持っておりますので、その強みをより成長に反映させるためには、通信業界以外の幅広い産業について深く理解しているTISさんとの協業が必要です。業種業態を問わずニーズが拡大しつづけているので、非常に心強い存在ですね。そして、そのTISとの関係を継続、深化出来るといった意味で、TIS-CVCの役割は大変大きいかと思っています。また、TIS-CVCを通じて対外的に発信してくれるなど、当初想定していなかった支援もして頂き、有難く思っております。
投資への意思決定のプロセスも合理的かつ検討期間も短期間での意思決定でしたので、スタートアップ企業への理解の懐の広さ、深さを感じました。
ありがとうございます。投資検討の期間は、スタートアップ企業の負担も大きく、また事業チャンスも逃がさないためにも、出来るだけ短くということを心掛けていますので、その点を評価頂いたことは嬉しく思っています。また、スタートアップ企業とTISの橋渡しという意味でのTIS-CVCの位置付けについても、CVCの一つの機能として重要な部分であり、その部分を評価頂いたことも、今後の励みになります。
TISさんのWebサイトなどを拝見していると、今後10年ほどの長期的な戦略として、パートナーとの共創による社会課題の解決を掲げているので、まさにそういうところで我々も貢献していきたいと思っています。
ぜひ一緒に協業していきたいと思います。当社はミークさんを含めて、当社の投資先さまとは良い協業関係を保ち、お互いの成長に繋げていきたいと考えております。 TISインテックグループは、TVCMでもお伝えしているとおり、「ITで、社会の願い 叶えよう」を標榜しており、ITで社会課題の解決に一緒に貢献できる有望なスタートアップ企業と共に成長していきたいと考えております。
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