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Interview

“技術”“ルール”“人”3つのブレイクスルーを武器に、国内ドローンの産業利用をリードそして世界を目指す
TIS INTEC Group

TIS

フェロー
山岸 功昇 氏

ブルーイノベーション

代表取締役社長

熊田 貴之 氏

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TISインテックグループでは、ファンドを活用しての投資ではなく、自己資金によるプリンシパル投資としてCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を展開している。TIS-CVCでは、同グループが携わる業界やIT領域で、スタートアップ企業と協業して成長を目指していく。今回取り上げる投資先は、日本におけるドローンの産業利用のパイオニアであるブルーイノベーションだ。同社はどのような強みを持ち、どのようなきっかけで両者の協業はスタートし、両社のコラボレーションによりどのような価値を創出しようとしているのか、TISにおいてCVCを指揮する山岸功昇氏と、ブルーイノベーションの代表取締役社長 最高執行役員、熊田貴之氏に話を聞いた。

「技術」「ルール」「人」それぞれのブレイクスルーでドローンの産業利用をリード

ブルーイノベーションは日本におけるドローンの産業利用の間違いなくパイオニアと呼べる存在ですが、まずはその事業の特徴について教えていただけますか。

熊田 氏

私は、ドローン産業を軌道に乗せるためには抑えるべき3つの「ブレイクスルー」があると考えており、当社はそれぞれのブレイクスルーを兼ね備えている点が特徴となっています。

まず1つ目はテクノロジーのブレイクスルーです。これは複数のドローンやロボット、センサーなどデバイスを遠隔で制御・統合管理する独自開発のデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP:ベップ)」が該当し、とりわけ当社ならではの最大の優位性の1つであると自負しているものです。BEPはいわばPCやスマートフォンのOSのようなドローン&ロボット・システムのプラットフォームで、現在は複数のドローンやロボットを連携させながら遠隔・目視外で自動制御できるようになっています。

通常、市販のドローンですと標準的な機能に止まり、様々なユースケースに対応することが難しく、送電線や構造物に沿って点検することなど難しいのが実際のところです。しかし当社は長年にわたりセンシング技術に携わってきたため、それを生かした独自のセンサ・フュージョン技術を開発しました。これにより、ブルーイノベーションのセンサモジュールを市販のドローンに搭載するだけで、途端に精密なドローンの自己位置推定を行い、精度の高い効果的な点検が行うことができ、GPSが使えないため自動飛行が困難な屋内施設であっても自動飛行が可能になるのです。なかでも送電線を検知して自動飛行する技術については唯一無二の技術であり、まさにいま海外からも問い合わせが来ているところです。

2つ目は法律・ルールのブレイクスルーです。当社は2014年7月というかなり早い段階で、ドローンをはじめとする次世代移動体システムに関する産学官のコンソーシアム団体である一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)を立ち上げに関わりました。それ以来JUIDAの事務局として、ドローンの産業振興、及び市場創造支援に取り組んでいます。

そうした活動の一環として、ドローンの安全ガイドラインも策定しました。2022年12月5日に施行された改正航空法もこのガイドラインが前例となり、改正作業が進められました。さらに、ドローンに関する技術についての国際標準化活動も様々なワーキンググループに参画し、議長などを務め、世界をリードしています。

また、技術のブレイクスルーとして先述したBEPを軸としたドローン飛行日誌・情報管理サービス「BLUE SKY」を最近リリースしましたが、こちらはJUIDA会員限定の無料サービスとなっています。先の法改正によりドローン飛行後には日誌をつけることが義務化されたのですが、BLUE SKYは飛行日誌の自動作成から機体メンテナンスまでドローン飛行管理に関する必要な機能を集約したオールインワンのサービスとなっています。つまりそこには“2つのブレイクスルー”が活かされていると言えます。

そして3つ目が、ドローンを扱う人のブレイクスルーです。いくら自動化が進むにせよ最終的にドローンを扱うのは人間ですから、ドローンのパイロットがいなければ何も始まりません。そこで当社では、既に25,000人以上のドローンパイロットのライセンスを発行しているJUIDAとタイアップして、ドローンパイロットの育成・教育にも力を入れています。

東大との共同研究で日本初のドローンによる海岸線モニタリングシステムを開発

まだ世間からそれほどドローンへの注目度が高くなかった時代にドローンの産業利用に着目し事業化された経緯についてお聞かせください。

熊田 氏

私はもともと大学院では海岸での防災対策を研究テーマとしていて、その後は海岸の防災に関するビジネスを行っていました。2004年には世界初の「海岸地形と底質粒径の変化が予測できる数値計算モデル」を開発し、海岸環境コンサルティング事業を立ち上げています。海岸で災害が発生すると原因究明のため空撮がとても重要なので、当時は国土地理院の空撮写真を用いていたのですが、それだと災害直後の決定的な瞬間はわかりません。そのため、当時はカメラを搭載したラジコン機や凧を飛ばしたりしていたものの、風に弱く安定した撮影はできず、あまり良い方法とは言えませんでした。

そこで何か良い撮影方法はないか探していたところ、航空業界の権威である東京大学航空宇宙工学科の鈴木真二教授(現・東京大学名誉教授/東京大学 未来ビジョン研究センター 特任教授)を紹介されたのです。先生は、御巣鷹山の航空機事故を教訓に落ちない飛行機の研究で、飛行機タイプのラジコン機に自動制御システムを搭載する飛行ロボット(現在のドローン)を開発し実験を行っていました。私は、海岸線モニタリングにこの飛行ロボットが使えないか相談したところ、面白そうだから一緒にやってみようという返事をいただきました。ちょうどマルチコプターなどのドローンが出始めていた頃ですね。それから東大との共同研究を開始し、日本初となるドローンによる海岸モニタリングシステムを開発しました。鈴木先生と一緒に海岸線で飛行ロボットの自動飛行の実験を行ったとき、私は機体が自動で戻ってきたのを見て「すごい技術だ!」と声を上げたのを今でも鮮明に覚えています。

共に歩みながら、社会課題の解決に貢献していきたい

TIS-CVCとしてブルーイノベーションに投資するに至った理由や経緯などについてお話いただけますか。

山岸 氏

当社が着目した2018年頃には既にブルーイノベーションさんはドローンの産業利用において多大な存在感を示していて、ドローンの機種自体にはあまりこだわらず、扱える機種も幅広く柔軟なことなどから今後ドローン事業を大きく伸ばせるのではないかと期待したのがきっかけとなります。それと熊田さんのお話にもあったように、安全のためのドローンパイロットの教育では日本一であり世界的な評価も高く、日本最大のドローンパイロットのネットワークも構築しているのも大きなポイントでしたね。ドローンというと完全自動飛行のイメージが強いかもしれませんが、実際にはそこまではすぐには到達できませんから、パイロットの存在というのは大きいのです。

ブルーイノベーションから見て、TIS-CVCをどのように評価していますか。

熊田 氏

最初は山岸さんが1人でフラッとやってきた感じだったのですが(笑)、話して見ると当社についてかなり深くリサーチしているのがわかりましたし、実際に投資していただくまでも相当に早かったですね。一般的には時間を要するケースが多いのですが、そこは山岸さんの力量なのかなと。

それとベンチャーキャピタルでもあまり追加出資というのはない中、TISインテックグループとして追加出資をしていただいたのは大変ありがたかったです。追加出資していただいたことにより我々としても事業の幅が拡がりました。あと、出資・協業に当たっては両社の幹部の方々と直接会ってお話したのですが、なかなか大企業の幹部に直接会って話をするというのはできないので、両社の経営戦略部門と一緒になって事業を行えるのも非常にありがたいですね。

山岸 氏

ありがとうございます。私としてもブルーイノベーションさんは最初から非常にお付き合いしやすかったですね。やはり当社の仕組みを理解してくれるのもそうですし、いろいろな面で相性がよかったのです。TISとしてもロボット分野には注目しているので、これまでも一緒にいくつものPoCを重ねてきていますし、今後はTISインテックグループのサービスとして展開できるような協業をしていきたいと考えています。

熊田 氏

当社としても、これからBEPをSaaSからPaaSへよりプラットフォーム化を加速していきたいので、TISインテックグループと一緒に新しいソリューションをどんどんと世の中に出していければと願っています。できるならばデファクトスタンダードになったり、大ヒットしたりするようなソリューションパッケージも一緒につくりたいですね。

山岸 氏

いきなり大ヒットは難しいかもしれないですが(笑)、ブルーイノベーションさんとの協業から生まれた新しいものを当社のクライアントに提供したいですし、広く社会課題の解決に一緒に貢献できるようこれからもよろしくお願いします。

TISのCVCに関するお問合せは
下記メールアドレスまでお送りください。

incubation@tis.co.jp

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