水引産業で地域に貢献したいという想い -水引 vol.3-

アート&クラフト

ノワイエ編集部by ノワイエ編集部

2027年水引の街で

ピンク、ミントグリーン、紫、グレー、ベージュ。「北欧の家具や雑貨からヒントを得た」と話す優しい色味の小物やアクセサリーは、小松さんの友人やかつての職場の同僚、頑張って日々を過ごしている女性たちをイメージして、「毎日お守りのように持てるものを」と考案したという。目の前に並べた作品や商品に向ける視線は我が子を見つめる母のようにやさしい。

水引デザイナーとしての不安や焦り、難しさを口にする小松さん。本気で向き合っているからこそ、インタビュー時に表情が強張る瞬間もあったが、その目の奥に見えるのは水引と真正面から向き合いたいという強い想いだった。

水引の栞やコースターなど、暮らしの中でも活躍する商品
水引の栞やコースターなど、暮らしの中でも活躍する商品

“不安や心配事は絶えないけれど、独立してこの仕事を選んだことに後悔はない”

「会社員として働いていた当時からは、想定もできないような仕事をさせてもらえることが嬉しい」と力強く答えてくれた。

今年に入ってからは銀座の大型商業施設から、展示用の大きな作品の制作依頼があった。

水引作品のほとんどが大きくても両手に収まるものがほとんどだが、1mほどもある大きな作品の制作は、未知数な部分も多く、試行錯誤の連続。しかし、大型作品の制作は新しく刺激的で水引の可能性をさらに拡げるものだった。何より「自分という個人に、これほどの仕事を任せてもらえる」という事実は、大きな自信に繋がったという。

20代で努力して積み上げてきたものを手放せず、なかなか新しいステップへ進めない人は多いかもしれない。30代になって新たな挑戦を選ぶことに不安はなかったかという質問に、小松さんは「不安はあったけれど、40代になったら踏み出す事がもっと怖くなるかもしれないと思った。だからやるなら今だろうな、と思い切って決断した。」と答えてくれた。

女性にとって、20代後半から30代前半は周囲の変化も激しく、結婚や出産を意識する機会も増えていく時期。出産を考え、早めに結婚に重心を置く決断をする女性も一定数いる。

結婚や出産も前向きにとらえているという小松さんだが、「結婚や出産にもタイミングはあるけれど、仕事にもタイミングがあるから」と話す。

今この時期の自分でなければ、受けることができなかった仕事もある。「いつかは結婚も出産も経験できたらと思ってはいるけれど、仕事に夢中になれている今にも価値があると思う」と晴れやかな表情で話してくれた。

十年後の自分の姿を想像した時、どこで何をしていると思う?と小松さんに尋ねてみると、「やっぱり水引には携わっていたい」と答えた。

「2027年に品川~名古屋間を結ぶリニア新幹線が開通する予定なので、そうなれば関東エリアから飯田市にある長野駅へのアクセスも格段に良くなる。その時までに飯田市を水引の街としてブランディングしていきたい。」

主に水引雑貨のデザインを手がけている小松さんだが、新しい水引素材の開発や、産業と地域を盛り上げていくための活動などにも力を入れている。また、一度きりで役割を終えてしまいがちな、ご祝儀袋の水引をリユースする方法の考案もしていきたいと、とても意欲的。

「10年後はもしかすると結婚しているかもしれないし、子どもがいるかもしれない。いずれにしても水引には携わり続けて、何かしら前進できていたら」

「水引産業の発展に貢献したい」という強い想いから、様々なアプローチで水引と向き合い、幅広い活動を続けていくつもりだという。

小松さんに、挑戦してみたいことがあっても、リスクや先行きのみえない不安から、踏み出せない人もいると思うが、何か伝えたいことはあるか問いかけてみた。

「会社員として働いて得た経験は、今とても役に立っている。あの頃もっと周りの人の仕事を見たり、真剣に取り組んでいたら、一人になったときに活かせたはずなのにと思うことも。でも、本気でやってみたいことがあるなら勇気を出して挑戦すべき。自分で考えて決めたことは後悔しないはず。自分にしかできない仕事を、自分の責任で選ぶ。そうすればきっと多少の壁も乗り越えられますよ!」

2027年、リニア新幹線が開通した飯田市は、水引の街として全国にその名を知られるまでになっているだろうか。不安や壁を乗り越え、水引産業に自分らしい風を吹かせる小松さんと、水引の街で会える日を楽しみにしたい。

小松慶子

小松慶子
1983年長野県飯田市生まれ、東京八王子育ち。
Web制作などを行うIT企業に勤務する傍ら、同時に水引関連事業をスタートさせ、自分が好きだと思えること、自分にしかできないことを仕事にしようと、水引デザイナーとしての道を選び、今に至る。

 

水引アクセサリーと雑貨のお店 紙単衣

https://kamihitoe.theshop.jp/

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